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ウミひとココロ物語 第2話

投稿日:2018.06.30/最終更新日:2018.07.02 つぶやき

きっかけ

七海の乗った地下鉄は最寄り駅へ到着し、いつもより手荒に、押し出されるようにホームに降り立った。今の七海には、自発的に車両を降りようとする力強さはなく、車両から降りようとする人達の勢いに身を任せるように押し出されたようだった。改札口へ向かうその足取りは、いつもより重く、そしてゆっくりだった。七海を追い越してゆく人々の波は、七海がそこにいる事が分かっていたかのように、七海をかわしながら改札口の方へ流れている。七海自身もまるで別の空間にいるかのように、不思議と周りの喧騒も耳に入って来なかった。

晴子とは別々の大学に進み、平凡な大学生活を送り、就職をした。社会人として仕事の厳しさを学び、やっと仕事の楽しさが分かりはじめてきた。また28歳の女性としても、年相応の経験も重ねてきた。そんな色々な思いや経験を積み重ねてきた結果として、今の自分がある。
改札をとおり、駅を出て、自宅へ向かう中、七海は、地下鉄のガラスに写った自分を思い出し、こんな風に自分を省みていた。

部屋の鍵を開け、明かりをつけた。
いつもの場所にバックを置き、ソファに座った七海は、もう一度、あの言葉を思い出した
「晴子なら、今の私になんて言うだろう?」
晴子に電話しようかと思った。しかし、出来なかった。いや、しなかったという方が正しい。してはいけないとも考えていた。ここで電話をすれば、晴子ならきっと、私を叱るはずだ。いつもそうやって私を鼓舞してくれてきた。今また晴子に電話したら、私はあの当時から、何も成長していない事を自分自身で認めてしまうと思っていた。そんな時、ふっとこんな言葉を思い出した。
「人に何か相談するとき、その時には、その問題はほとんど解決している。ただ自分の出した答えに背中を押して欲しいだけなんだ」
誰の言葉か、どこで聞いたのかも覚えていない。ただ、人は自分の欲している言葉を他人に求めているだけ。賛同を得たいだけでしかない。七海はそう解釈していた。
そしてもう一言、七海が思い出した言葉があった。

「だってって言うなッ!!これが結果だろう!!」

入社して間もないころ、小野寺に初めて怒られた時、浴びせられた言葉だった。
言い訳をしても目の前の事実は変わらない。これからどうするか考えろ!と小野寺に教わった。

「言い訳はしない!決めるのは自分。自分はどうしたいのか?自分で答えをだす!!」
七海は何度も何度も自分に言い聞かせた。

今夜は、空腹さえも気にならなかった。着替えを終え、シャワーを浴びた。
少し熱めのシャワーを浴びて、七海はほんの少しだが、気分がスッキリしていた。
おもむろにテレビのリモコンを取り、スイッチを押した。
ちょうど、その時、どこかの海岸沿いで女性のアナウンサーがインタビューをしてる映像が流れていた。道行く人達、海の家で働いているであろう人達など、いろいろ聞いてまわっているようだった。
インタビューの内容には気を止めなかったが、どこの海だろう?と少し気になり、テレビ画面に注目をしてみた。
どこかで見た風景と背後に広がる海岸線。どこかで見たような建物達。
「これってもしかして内海?」
アナウンサーによるインタビューが終わると画面はスタジオに変わり
「はい。と言うことで、南知多町の内海海岸からのVTRでした」とスタジオの男性アナウンサーからの一言で、テレビはCMに切り替わった。

「やっぱり内海だったんだぁ!同じ日に2度も内海を目にするなんて・・・」
「なんか、内海に縁でもあるのかな? 小野寺さんにもリフレッシュして来いって言われてるし、距離的にもそんなに遠くないし、行ってみようかな!?」
自分の中である程度の着地点を見つけかけているのか、少し前向きになっていた七海は
「内海へ行こう!行ってみよう!!」

シャワーで濡れた髪は、まだそのままだったが
七海は、すぐにパソコンを開き、インターネットで内海のことを調べ始めた。

つづく
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